『詩・現實』第四冊(昭和6年/武蔵野書院刊)掲載の、
三好逹治による『檸檬』の広告。「梶井基次郎君に」
三好広告

梶井基次郎創作集『檸檬』

梶井基次郎君に
三 好 逹 治

 君の本が出るのは何より喜しい、喜しいどころではない、
僕は肩身の廣い誇りを感じる。僕らの時代の若い作家逹の間で、
君ほど最初から自信に満ちた仕事をした人はない。
最近君の原稿を整理しながら。僕はしみじみと君への敬意を新たにした。
卷頭の『檸檬』の一作から。君は既に一家をなしてゐる。
その作品が發表されてから、もう既に六年にもなるだらう。
その間君は一圖に、一絲亂れない歩なみで、君のレアりスムをつきつめた。
君が多感だつた若い日に、君に及ぽした種々の影響も、
君の秀れた把握力によつて、悉く正しい位置にまでつき戻され
多彩な感興の交錯した結果から、年を經るに従つて、
一層純粹な君の肖像が洗ひ出されてゐる。現在の我が文壇に於て、
君ほど正確さを愛し、君ほど個性のレアリテを明らかに示した人はゐないだらう。
君の藝術に就ては、なほ後日僕は多少の文章を費したい。
 君の本が出る。永久の本、確かにこれは永久に滅びない本だ。
君の本が出ることは、僕の無上の喜びである。
いささか蕪辭を連ねた罪は、許し給へ。

・四六判全一册
・四月下浣發賣
東京武蔵野書院

淀野隆三/佐藤正影共譯
『スワン家の方』(昭和6年/武蔵野書院刊行)掲載の、
淀野隆三の手になる『檸檬』広告。

スワン家の方

  梶井基次郎第一創作集『檸檬』

  われわれがこれらの作品に接して抱く感激は
  著者が驚くべき感受性と特異なる解析力を以つて
  複雜せる現實事象を剔抉し、人生のリアリティを餘すところなく
  把握してゐることである。
  しかも微細なる陰影が嘗つてかくばかり太々しく
  洗錬の極點に於いて表現されたことがあらうか。
  この銳き觀照の世界を見よ!われわれは斷言する、
  この偉大なる藝術の出現こそはジャーナリズムの
  貧婪なる毒手に飜弄され見る影もなく醜體を曝しつつある
  現文壇では稀有の存在であることを。
  蓋し「檸檬」一卷は明日の文學の可能を實證するもの、
  今日の文學に絕望せる人々を救ふ聖典であると云ふも過言ではない。
  文學に關心をもつ人々は是非とも一本を座右に備へなければならぬ。
  それは眞に文學を愛する人々の義務だ。

作家・言語文化史学者の千 草子 先生による
能のエッセイ、

新作能「面影」の前に、そして後に、未来に
──間(アイ)の現実提示力と、橋がかりのマジック──
(その一)

が、「能楽タイムス」6月号に掲載されました。
7月号には(その二)が掲載予定とのことです。

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